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安田貴広による「イデア」収録全楽曲セルフライナーノーツ。

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アルカイック

人間が怖くて、人間が嫌いで、だがしかし自分も人間でした。さてどうしたものかと。人と関わることを避けていては、外界と自分の乖離がどんどん酷くなり、ただ余計に生きにくくなるばかりです。人が傷つけ合いときには癒し合うこの世界を、僕も含めたすべての人間があと少しだけ愛せるようになればどんなにいいだろうという想いを書きました。こう強く思ってもいつも次の日にはもう忘れていることにうんざりしてきたので、音楽にすれば少しは忘れずに生きられるかと思った次第です。

テレプシコーラ

「踊る」という言葉は受動態の〝踊らされる〟になると、途端にネガティヴな意味合いになります。「いいように利用される」とか、「操られる」、「振り回される」といった具合です。
最近は誰もが、この〝踊らされる〟ことに対してやけに強い恐怖心を抱いているように思います。自分を含めて。しかし何にも踊らされずに生きるということは、生涯を自分だけの独房で過ごすことと変わりないんじゃないだろうか。例え踊らされながらでも、独房で生きるよりずっといい。

安心毛布

毛布は好きです。毛布をかぶると時間の流れが変わります。毛布をかぶって過ごす時間は、たいていは暗鬱な気分で始まるのだけれど、その中でじっとしていると良いことは何も起こらない代わりに悪いことも起こりません。その平らな時間にある種の安らぎを覚えてしまうのもたしかです。
ただ、外に出た時は必ず思うんですよね。あぁ、外に出てよかった。こもっていなくてよかった、と。

トウメイノカナタ

人として認められたい。自分の存在理由を示してほしい。誰にも奪われない居場所が欲しい。こんなことばかり考えている臆病な人間のくせに、常に物事を俯瞰で見て、知ったようなことばかり言っている自分にあるとき気づきました。見知ったモノをいちいちカテゴライズして「あぁはいはい○○系ね」と言っていないと安心できないとは、なんと馬鹿馬鹿しく滑稽なんだろう。そんな気持ちも暴露してしまえば、無知で矮小な自分を隠すための無駄なエネルギー消費を抑えることができるかと思って書いた曲です。器の大きい人間になりたいものですね。

このアルバムの中で一番昔に書いた曲です。収録するか迷いに迷っていたのですが、黒子のバスケ脅迫事件の犯人が綴った手記を読み、その心情を非常によく理解できてしまった自分の使命はこの曲をお蔵入りさせないことかもしれないと思い収録しました。

クリア

こちらもかなり前に書いた曲ですが、当時と今の心情の差異が大きかったので、全編に渡り歌詞をリライトしました。
「憎しみなんて寂しさと裏表」という1フレーズが初めにあり、それを掘り下げ膨らませて仕上げました。

ミクロファンタジア

棘、クリアに負けず、古い曲です。歌詞は仮のものしかついていなかったので、全て書き直しました。僕が昔からやっている歌詞の書き方を一番色濃く実践しました。とにかく内容はさておき、リズムと韻を大切にして構築していくという方法です。そうすると、自覚していなかった自分の無意識の意志が顔を出すのは毎回驚くばかりです。
「孤独さえ分かち合いたいなんて、ワガママが過ぎるよなぁ。」という1フレーズを元に構築しました。

dusty rave

今回のアルバムでは少なめな、金属質で攻撃的な曲です。人間が持つ卑怯さと矛盾を、極力オブラートに包まずに書きました。詩的な表現をできる限り使わなかったので、逆に生々しいかもしれません。

耳鳴り

自分の才能を疑い続ける日々は、おそらく一生終わることは無いのでしょうが、猜疑心が最大限まで膨れ上がるとこんな気持ちになるのではないでしょうか。少なくとも僕はこんな気持ちに。

経過報告

僕は田舎者なので、東京の街を歩くだけで心が少し擦り減る感覚を覚えます。ある日新宿駅を歩いていると、不意に途方もない寂しさに襲われ、これは形にしなければならないと思いその場ですぐ書き上げました。過去に出会い、今はもう会えない人の顔も思い出しました。ベンチにも座らず、街の片隅に立ったまま携帯電話で書いたことを覚えています。

パンデミック・フィロソフィ

もしこの世界にもっと分かりやすいワルモノがいれば、全てをそいつの所為にして僕らはもっと健やかに生きていけるのに。…という想いを書きました。この感覚を題材にして書かれた小説を何作か読み、自分なりの感覚を構築するのに数ヶ月を要しました。

おことわり

曲調が非常に変わっているので、その空気感を壊さないよう叙情的な歌詞にしました。分散した思考を敢えてまとめずに詰め込み混沌を表現しました。もしも聴いていて何かしらの風景が思い浮かぶようでしたら、それは僕にとっては成功ですので嬉しい限りです。

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