安田貴広による「空の無い世界」収録全楽曲セルフライナーノーツ。
サクリファイスタウン
イルミネーションが苦手です。星空は好きなのにね。空に輝く星とは違い、イルミネーションには命はありません。そう考えたら、何だか怖いなと思いました。人が心を洗われると感じるものは、人には創りだせないものであってほしいという願望があるのだと思います。
でも、砕けてしまった誰かの夢ですら、亡骸となってもなお、輝き続けているのかもしれない。そんな色とりどりの夢が集まってイルミネーションを作っているとしたら、僕は美しいと感じるでしょう。夢という名の人工物。ただの妄想です。
それでも僕は嘘をつく
変わりたいという思いと、変わる事が出来ないという事実。誰もがその狭間でもがいていて、それが即ち〝生きる〟という事なのかと思いました。いくつも出してきた不完全な答えの、これもまた一つです。
空の無い世界
誰か答えを知っているのなら、教えてほしい。ただそれだけです。でも、何も考えないで生きていければ、それが一番幸せなのだろうなと思います。
そうはいかない貴方には、せめて何か、夢を見せたい。
この気持ちをそのまま、歌にしました。
ガーデニア
自分の大切な人が悲しみ、傷つき、自分を頼ってくれる。そんなときに感じる、ほんの僅かな(あるいは大きな)喜びがあります。自分の存在がこの人の役に立つのだなと思える喜び。僕だけでしょうか？
喜ぶ僕に、その後すぐに襲いかかるのは罪悪感です。
リビングデッド
とあるゲームを朝から晩までやっていた時期がありました。ゾンビが出てくるゲーム。殺伐としていたけど、僕たちが普段生きているリアルな世界よりは分かりやすくていいかもしれないなぁ。まぁ、作り物ですからね。
ライクアバーズアイ
鳥の視点と虫の視点、というのがあるらしいです。想像すれば、それがどんなことを表してるのかわかりますよね。
僕には翼が無いので、歩いていきます。
デラシネスタ
僕特有の、真夜中に眠れずに考え事をしていて出来た曲ですが、深夜に書いたのにバッドエンドにならなかったのは初めてかもしれません。
ベタやご都合主義をバカにしていた幼い自分を脱却したいと思いました。ベタやご都合主義が世の中に溢れているのは、それだけ多くの人がそれを見たいと望んでいるからです。気付けなかったな。
let it die～エコーロケーション～
読み返すと、なんと自罰的な歌だろう…。暗闇の中で目が見えないなら、黙ってうずくまってないで声を出すべきです。誰かがいるかもしれないし、もしいなくても、自分の声が反響してどんな場所か少し見当がつくかもしれません。
寝胸夢
見落としたり、道を間違えたり、引き返したり、諦めたり。自分の意志でどうにかできることも、力不足でどうにもならないことも、たくさんあります。でも、「あの時はどうにもできなかったけど、結果的にはそのほうがよかった」みたいなこともあると思うんですよね。
そんなことを考えながら作った歌です。
ストックホルムシンドローム
ダメな人が自分のダメなところを独白する歌です。書きながら思ったのは、自分とばかり会話しているとろくな事にならないなということ。
幾星霜
刃物は、研ぎすぎると、鋭利さと引き換えに脆くなります。折れてしまうくらいなら、逃げたほうがいい。
黙
人が初めて嘘を付くようになるのは、本当のことを言って、それが信じてもらえなかったときだそうです。
僕はなぜ、こんなに嘘ばかりついて生きているのでしょう。
嘘つきの歌です。
